ポールスターピラティスジャパン
マタニティピラティスの指導|妊婦さんを安全にサポートする専門知識

近年、ウィメンズ・ヘルスへの関心が高まり、産前・産後の女性を対象としたサービスはますます充実してきました。産婦人科で運動療法を取り入れる施設や、マタニティピラティスを提供するスタジオも増え、妊娠中の運動は以前より身近な選択肢になっています。
妊娠中の適切な運動は、腰痛や骨盤帯痛の軽減、睡眠の質の向上、体重管理、妊娠糖尿病のリスク軽減など、さまざまなメリットが報告されています。そのため、妊娠経過が順調で、主治医から運動の許可を得ている妊婦さんには、適度な運動が推奨されています。
一方で、インストラクターの立場になると、こんな不安を感じたことはないでしょうか。
「妊婦さんには何をしたらいいのだろう」
「安全に指導するには、どんなことに気を付ければいいのだろう」
ポールスターでは、
「妊婦さんにはこのエクササイズ」という考え方ではなく、
まず「その人の身体を理解すること」を大切にしています。
今回はPilates Hour #221 – Pilates for Pregnancy の内容をもとに、ポールスターが考えるマタニティピラティスの視点をご紹介します。
※本記事は、妊娠経過が順調で主治医から運動許可を得ている方を対象とした一般的な内容です。
運動の可否については必ず医師・助産師など医療者の指示に従ってください。
妊娠中の身体は日々「変化する」

妊娠すると、お腹が大きくなることで身体は日々変化し、重心は少しずつ前へ移動します。
そして、姿勢や呼吸の仕方も変わり、体重が増える一方で、
体幹や下肢の筋力には変化が生じ、関節もホルモンの影響で柔軟性が高まります。
その結果、日常生活の動きでも少しずつ身体の使い方が変わり、
腰や背中が疲れやすくなったり、立ち上がることや階段の昇り降りが
以前より大変に感じられたりすることも少なくありません。
腰が張りやすくなったり、ふくらはぎがつりやすくなったり、
「最近疲れやすくなった」と感じる方が多いのも、その変化と無関係ではありません。
でも、ここで大切なのは、
その姿勢を「悪い姿勢」と決めつけないことです。
妊娠中の身体は、新しい命を育てるために変化しています。
妊婦さんへのピラティスでは、
いわゆる「正常な姿勢」へ戻すことよりも、
「その身体が今どう適応しているか」を観察することを大切にします。
日本のウィメンズ・ヘルス領域でも、
妊産婦の姿勢は非常に多様であり、「正しい姿勢」に戻すことよりも、
その人がどのように身体を使い、どのようなことに困っているのかを理解することが重要だとされています。
つまり、私たちが見るべきなのは「姿勢の形」だけではなく、
「その姿勢でどのように動いているか」なのです。
「妊婦さん」ではなく、「その人」を見る
同じ妊婦さんでも、
- 妊娠前から運動を続けていた方
- 妊娠をきっかけに初めて運動を始める方
- 初産婦と経産婦
- 仕事を続けている方
- 腰痛や骨盤帯痛を抱えている方
では、身体の状態は一人ひとり異なり、必要なサポートも異なります。
ポールスターでは、「妊婦だからこのプログラム」という画一的な考え方ではなく、
まず話を聞き、身体を観察し、一人ひとりの身体の状態や生活背景を踏まえ、
その人に合った運動を組み立てていきます。
決められたエクササイズを当てはめるのではなく、
評価をもとに、その人に必要な運動を考えていく。
このように臨床推論(clinical reasoning)に基づいた考え方は、
ポールスターの大きな特徴です。
評価は「日常」から始まっている
「評価」と聞くと、特別なテストを思い浮かべるかもしれません。
でも、評価は「日常」から始まっています。
スタジオに入ってくる歩き方。
椅子に座る動作。
立ち上がるタイミング。
呼吸の様子。
こうした何気ない動きの中にも、その人の身体の特徴がたくさん表れています。
また養成コースでは、どのコースでも、
「Fitness Screening」と呼ばれる機能的な評価を通して、
対象者が動きの中でどのように身体を使っているかを観察して、評価する方法を学びます。
もちろん妊娠中は、その時期や体調に応じて評価の内容は調整しますが、
「何が悪いか」を探すためではなく、
「どこをサポートするともっと動きやすくなるのか」、
そのヒントを見つけるために観察します。
身体の反応を引き出す環境を整える
妊娠中は、お腹が大きくなるにつれて呼吸や重心、股関節の動きも変化します。
ポールスターでは、意識して特定の筋肉を収縮させることより、
身体が自然に反応できる環境を整えることを重視しています。
例えば、呼吸や姿勢、重力がかかる方向を工夫することで、
身体が本来備えている機能を自然に引き出していくことを目指します。
胸郭の動きが引き出されることで、呼吸がしやすくなり、
股関節が動きやすくなることで、立つ・歩く・しゃがむといった日常動作もスムーズになります。
必要に応じて、仰向けの姿勢が負担になりやすい時期には、身体を少し起こした姿勢や上体を約30度傾けるなど、安全性に配慮しながら運動を進めることもあります。
「教える」より、「感じてもらう」
ポールスターでは、キューイングも必要最低限にすることを大切にしています。
インストラクターは、良かれと思ってたくさん声をかけたくなります。
「肩を広く保ちましょう」
「お腹を縦長にしてください」
「骨盤をこう動かしてください」
ですが、本当に必要なのは、
クライアント自身が身体の変化に気づく時間をつくることではないでしょうか。
「今の動きはどう感じましたか?」
「呼吸は楽ですか?」
「お腹の張りはありませんか?」
そのように問いかけながら、身体の反応を一緒に確認してみましょう。
妊娠中は身体が毎週のように変化します。
以前は心地よかった動きが、違和感につながることもあります。
だからこそ、「こう感じるはずです」と答えを与えるよりも、
自分の身体の声を聴けるようサポートすることが、
クライアントにとっても、インストラクターにとっても、
安全で質の高い指導につながります。

ポールスターが大切にしていること
ポールスターピラティスでは、
公式のカンファレンスやワークショップで産前産後のテーマを扱うことはありますが、
「マタニティピラティス」に特化した資格はありません。
その代わり、どの養成コースでも妊娠中の禁忌や注意事項について学びます。
妊婦さんに対して特定のエクササイズを覚えるのではなく、
解剖学や運動学、評価、臨床推論を基礎から学ぶことで、
一人ひとりの身体に合わせて運動を組み立てる力を身につけ、
あらゆるクライアントに対応できるインストラクターを育成することを目指しています。
身体は一人ひとり違います。
そして妊娠というライフステージでは、その変化はさらに大きくなります。
だからこそ必要なのは、
「○○の人にはこの運動」という知識ではなく、
目の前の身体を理解し、その人に合った運動を考えられる力です。
おわりに
マタニティピラティスでは、
妊娠という大きく変化する身体を理解し、
その人の反応を丁寧に観察しながら、一人ひとりに合った運動を組み立てていくことが大切です。
その背景には、「評価し、考え、最適な運動につなげる」というポールスターの一貫した考え方があります。
養成コースでは、マタニティに限らず、こうした評価や思考プロセスの基礎を学ぶことができます。全器具を扱うコンプリヘンシブコースのほか、マット指導から始めたい方にはマットピラティス資格コースがあります。
「エクササイズを教える」だけではなく、
「身体を理解し、その人に合わせて考えられるインストラクターになりたい」
そんな方は、ぜひ説明会や見学会にもご参加ください。
▶養成コース説明会・見学会はこちらから
迷われている方も、ぜひお気軽に。随時開催中です!

本記事は、以下の内容を参考にしています:
・Pilates Hour #221 – Pilates for Pregnancy (2025/12/09)
・上杉雅之監修, 山本綾子・荒木智子編:理学療法士のためのウィメンズ・ヘルス運動療法,医歯薬出版, 2017.