ピラティス呼吸法の科学的効果|正しい呼吸パターンと指導のコツ

呼吸はピラティスの基本であり、さまざまなスポーツや武術、ボディワークにも共通する大切な要素です。

しかし、「呼吸が大切」と言われても、なぜ大切なのか、どのように動きと関係しているのかを理解している方は意外と多くありません。

今回は、ピラティスにおける呼吸の基本と、指導現場で役立つ考え方についてお伝えします。

この記事は Pilates Hour #247 – Teaching with Breath and Intention(2025/07/30)を参考に作成しています。

まずは自分の呼吸を観察してみましょう

最初に、今の自分の呼吸がどのように行われているのか確認してみましょう。

仰向け、または楽な座位になり、ゆっくり呼吸をしてみます。

空気はどこに入る感じがするでしょうか。

  • お腹の前
  • 胸の前
  • 肋骨の横
  • 背中側

呼吸の感覚は人によって異なります。

分かりにくい場合は、手を身体に当ててみるのがおすすめです。
例えば、片手をお腹に、もう片方を胸に置いてみましょう。
あるいは肋骨の横や背中に手を当てても構いません。

どこがよく動き、どこがあまり動いていないでしょうか。

ピラティスのクラスやセッションで、最初にこのような呼吸の確認を行ったことがある方もいるかもしれません。
これは単に呼吸を確認するためだけではありません。

呼吸を観察すると、

  • 胸だけで呼吸している
  • 片側の肋骨が動きにくい
  • 背中に呼吸が入りにくい

といった身体の特徴が見えてきます。

呼吸は、その人の姿勢や動きのクセを知るための大切な評価ツールでもあるのです。

また、呼吸に意識を向けることで、「今ここ」に集中する効果もあります。

クラスが始まっても、
「終わったら買い物に行かなきゃ」
「明日までにあれをやらないと」
と、意識が日常のタスクへ向いてしまうことがあります。

呼吸に意識を向けることで、自分の身体と今この瞬間に集中しやすくなります。

マットエクササイズ

呼吸は全身で行われる運動

呼吸は肺だけで行われるものではありません。

呼吸には、横隔膜や肋間筋、腹筋群、骨盤底筋、多裂筋など、多くの筋肉が関わっています。これらが協調して働くことで、効率的な呼吸が生まれます。

息を吸うと、横隔膜は収縮して下方へ移動し、胸郭は立体的に広がります。
一般的に呼吸は「腹式呼吸」と「胸式呼吸」に分けて説明されることがあります。腹式呼吸では、吸気時に横隔膜が下降することで内臓が押し下げられ、お腹が膨らみます。一方、胸式呼吸では肋骨の動きが大きくなります。

ここで大切なのは、胸式呼吸であっても横隔膜は働いているということです。
実際の呼吸は「腹式」「胸式」と明確に分かれているわけではなく、その割合が変化していると考える方が自然でしょう。

また、呼吸パターンは姿勢制御とも関係しており、骨盤底筋とも協調して働いています。

そのためピラティスでは、呼吸は酸素を取り込むためだけではなく、姿勢の保持や体幹の安定、効率的な動きを支える役割も担っています。

呼吸と体幹の安定性

近年では、横隔膜が呼吸筋であるだけでなく、体幹の安定にも関与することが広く知られるようになっています。

「体幹を安定させる」と聞くと、お腹を強く締め続けるイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし実際には、呼吸を止めずに適切な腹腔内圧をコントロールできることが重要です。

例えば、ピラティスの代表的なエクササイズである Hundred では、腕を動かしながら一定のリズムで呼吸を続けます。
これは単に息苦しくならないためではありません。

呼吸を続けることで横隔膜や腹筋群が協調して働き、体幹の安定を保ちながら動くことを学んでいるのです。

呼吸で動きを変える

ポールスターピラティスには、
“Breath facilitates movement, movement facilitates breath”
(呼吸は動きを促し、動きは呼吸を促す)
という考え方があります。

その考え方を実践する方法の一つが方向性呼吸(Directional Breathing)です。例えば、

  • 胸の前へ呼吸を送る → 脊柱伸展を促しやすい
  • 背中側へ呼吸を送る → 脊柱屈曲を促しやすい
  • 体幹の片側へ呼吸を送る → 側屈を促しやすい

といった使い方ができます。

呼吸を利用することで、外から動きを修正するのではなく、身体の内側から動きを引き出すことができます。

マットコース風景

この考え方は姿勢改善にも応用できます。
例えば、猫背の方に「胸を張ってください」と伝えても、その姿勢を維持するのは簡単ではありません。
この場合、胸の前へ呼吸を送り、胸郭の前方への拡張を感じてもらうことで、自然に胸椎伸展が促されることがあります。

同様に、反り腰では背中側への呼吸、といったように、
呼吸そのものを姿勢改善のツールとして活用することができます。

呼吸はルールでなく、ツール

ピラティスを始めたばかりの方は、
「どこで吸うの?」
「どこで吐くの?」
と迷うことがあります。

もちろん基本的な呼吸パターンはありますが、ポールスターピラティスでは“Breath is a tool, not a rule”という考え方を大切にしています。
呼吸はルールではなくツールです。
大切なのは、「どこで吸うか」「どこで吐くか」を暗記することではありません。呼吸によって、その人がより効率よく動けるようになることです。

同じエクササイズでも、呼吸を変えるだけで身体の使い方が変わることがあります。

頑張りすぎない呼吸

呼吸においても、ピラティスでは効率性を大切にします。

クラス中、「フー!フー!」と強く息を吐き続けている方を見かけることがあります。もちろん意図的なエクササイズであれば問題ありません。
しかし、効率的な呼吸という視点で考えたとき、60分間ずっとその呼吸が必要とは限りません。

呼吸を意識しすぎるあまり、

  • 肩が上がる
  • 首に力が入る
  • 息を吐くことばかり頑張る

といった状態になってしまうこともあります。

必要なだけ呼吸を使い、必要以上に頑張らない。
これは呼吸だけでなく、ピラティスの動き全体にも共通する考え方です。

まとめ

呼吸は単に「吸う・吐く」だけのものではありません。

呼吸を観察すると身体の特徴が見え、呼吸を変えることで姿勢や動きまで変わることがあります。

だからこそ、ピラティスでは呼吸を単なるテクニックではなく、評価・運動・姿勢改善をつなぐ重要なツールとして捉えています。

養成コースでは、このような呼吸のメカニズムや評価方法、実際の指導方法まで実技を通して学んでいきます。

「どこで吸う・吐く」を覚えるだけでなく、一人ひとりに合わせて呼吸を活用できる指導者を目指したい方は、ぜひ養成コースもご覧ください。

コンプリヘンシブコース風景

養成コースにご興味のある方は
ぜひ説明会・見学会にお気軽にご参加ください。
随時開催中!詳しくはこちらから

他の記事も読んでみませんか?