対談記事 ピラティスと側弯症

中村眞二(以下中村)

「『側弯症』という名称は、ピラティス指導者の間でも広く認知されるようになってきたと思います。今後、ピラティス関係者に求められる次のステップとはどのようなものなのでしょうか?」

格子先生

「言葉としての認知は進んできましたが、側弯症そのものに対する正しい理解を広めていくことが必要だと感じています。
ご存じのように、第一次成長期前後に発症する特発性側弯症、加齢に伴う変性側弯症、身体の使い方に起因する機能的なもの、先天性による構造的なものなど、側弯症にはさまざまなタイプがあります。
また、脊柱の変形は三次元的で複雑な構造をしていますが、ピラティス関係者や一般の方の中には、まだ二次元的(平面的)なイメージで捉えている方も少なくありません。この認識のギャップを埋めていくことが重要だと思います。」

中村

「名称を知るだけでなく、誤解を生まないレベルまで理解を深めていくことが重要ということですね。」

格子先生

「そうですね。さらに言えば、人間の身体は本来左右対称ではなく、さまざまなバランスを取りながら巧みに機能しています。

重要なのは、その方の日常生活やスポーツ活動において、機能的な問題が生じているかどうかを見極めることです。身体の左右差やアンバランスを見つけること自体は大切ですが、一部の所見だけを見て『これが原因です』『骨盤が歪んでいるからです』などと断定的に説明してしまうことには注意が必要です。

対象者は専門家の言葉を強く信じます。だからこそ、その言葉が先入観として心に残り、不必要な不安や過度な意識につながってしまうこともあります。

また、身体の歪みそのものよりも、専門家から植え付けられた先入観の方が、時として長く残ることもあるのです。軽々に専門的立場にある人が一部のアンバランスさのみを指摘する事で、専門的な対応方法を知らないクライアントさんが不安に掻き立てられ、連鎖的に誤った情報に振り回される事や、セッション受講継続を煽る方法として利用されてしまう危惧があります。

指導者に求められるのは、安易に診断することではなく、機能的な問題を評価し、必要に応じて医療機関と連携しながら、その方にとって最適な方向へ導いていくことだと思います。」

中村

「最近では、親しみやすさを持たせるために、あえて顔を左右非対称に作るマネキンもあると聞きます。本来備わっているアンバランスも、一つの個性として捉える視点が必要なのですね。」

格子先生

「そう思います。その上で、指導者には側弯症に対する根拠に基づいた指導方針とアプローチが求められます。また、日常生活でどのような動作に注意すべきかを助言する『バイオメカニカルカウンセリング』や、定期的な評価も重要になってきます。」

中村

「格子先生のお話を伺うと、医療との連携があることで、より安全で質の高いサポートが可能になることを改めて感じます。」

格子先生

「体位によって変化する側弯症の評価や、進行が認められた場合の分析、そして、ごくわずかなCobb角の変化が感覚の変化や痛みにつながるケースへの迅速な対応など、医療との緊密な連携ができれば、対象者にとって大きなメリットになると考えています。

また、ピラティス指導者、理学療法士、医師がそれぞれの専門性を持ち寄り、お互いの領域を尊重しながら協力できることが理想的な形だと思います。」

中村

「書籍では、乗馬療法など立ち直り反射を利用したアプローチについても紹介されています。最新の科学的エビデンスを医師が精査できることも、側弯症を抱える方にとって大きなメリットですね。」

格子先生

「治療の対象とならない時期であっても、対象者が求める成果に対して、誰が中心となり、どのようなチームで支えていくのかを考えることが大切です。

そして、そのチーム医療・チーム指導を持続可能なものにするためには、適切な情報共有と共通言語を持つことが今後ますます重要になってくると思います。」

中村

「本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。」

編集後記

今回の格子先生との対談を通じて、改めて側弯症の多様性を理解することの重要性、そして医療連携を基盤としたピラティス指導の価値を実感しました。

また、医師、理学療法士、ピラティス指導者がそれぞれの専門性を尊重しながらチームとして関わることで、対象者にとってより安心で質の高いサポートが可能になることも再認識しました。

コスト面などの課題は残されているものの、チームワークを得意とする日本ならではの強みを活かした多職種連携には、大きな可能性があります。

もし自分自身がクライアントであったなら、複数の専門職が同じ目標に向かって支えてくれることは大きな安心につながり、成果をともに喜び合えることも大きな励みになるでしょう。

側弯症に対する正しい理解と、医師/理学療法士/ピラティス指導者の複数スタッフなどの多職種が連携する環境づくりこそが、これからのピラティス指導に求められる重要なテーマなのではないかと感じました。

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